Tokyo 2月13日(月)
   
奴隷制(Slavery)を生み出したもの

 ローマの奴隷制についていろいろ考えていたところで、ローマの場合は戦争に負けた側が宗主国の奴隷となるという理屈はそれまでの歴史が繰り返されていたとみえるものの、英国や米国における奴隷制を生み出した根拠について、それが万人の平等を生み出すはずのキリスト教を基礎とした社会で現実のものとなったのは何故だったのかを考えていました。
 米国からみて日本は敗戦国であり、原則として“隷属”状態におかれていてもおかしくなかったのですが、(かつて中国侵略をした日本は、中国に疑似独立国を創設し、完全な治外法権を維持しようとしていたのであり、“西欧列強のやりかたを真似た”とかいっていましたが、ほんとうは日本流に中国、朝鮮半島、台湾等にたいして文字通りの隷属化=皇民化を押しつけたのは事実)、過去の奴隷制と比べて米国の少なくとも表向きの対応は、日本を米国に隷属させるのではなく建前として完全な独立国として扱ったことは否めないのでした。
 ただし、当時の首脳部には戦争に完全に負けてしまったので、“煮るなり焼くなりなんとでもしろ”みたいな開き直りがあったのではないか・・・、まだ断定できませんが隷属化をあえて申し入れるという体質があって、たとえば医療分野では、731部隊に属していて東京裁判の修羅場を生き延びて各地の医大で生息できた医師たちなどに残っていたのであり、安倍デンデンさんは戦後に残存して表向きは隠れていた米国への隷属的体質の火だねに風を送って、まるごと日本の隷属化を復活させようとしているとみられます。

 キリスト教社会で黒人奴隷が肯定され制度として取り入れられ人身売買がおこなわれていた根拠は、創世記9章にあります。

 セムの神、主をたたえよ。 
 カナンはセムの奴隷となれ。
 神がヤフェトの土地を広げ、
 セムの天幕に棲まわせ、カナンはその奴隷となれ。
 
 大洪水の後、ノアが三人の子どもたち、セム、ハム、ヤフェト(ヤペテ)に対して、それぞれの子孫たちにたいしての神の決定を告げる記事でした。カナン人とはヤペテの子孫であり、いわゆる黒系人種の祖。セムは今日のパレスチナ。日本人はセムに属し、ヤフェトと混血した種族のようです。ヤフェトは白系人種の祖となりました。
 白系人種は、セム系つまりユダヤキリスト教の系列にある聖書の潤沢な影響を受けて、キリスト教国家(Corpus Christianum)を形成しました。それにたいして、ハム系部族は奴隷とされるように“神によって定められている”という解釈がなされてきたのでした。黒色系人種は、白色系人種の奴隷とされる定めになっているとかいう言い方です。旧約聖書だけを読むとそのような結論に留まりそうにみえます。少なくとも、キリスト教にルーツをもたない奴隷制度をキリスト教社会が受け入れる素地となったのでした。

 しかし、もともと旧約聖書は新約聖書の光に照らして読まれなければなりません。キリストの業は「新しい創造」といわれているのであり、救済論においては、人種、肌の色、障害のあるなし、男女、身分、大人と子どもなど、どんな差違がありません。人が救われるのは恵みのみによるのであり、何の条件もないからです。ピレモン書には、奴隷制度の廃止が直接教えられているのではないにせよ、キリストのもとにある社会秩序には奴隷も自由人もないという近代につながるメッセージが伝わってきます。
 日本の有名なテレビドラマ、『白い巨塔』のテーマソングに採用されて一般にも広く知られるようになったアメージンング・グレース。
 作詞者は、イギリスの牧師、ジョン・ニュートン。ニュートンは牧師になる前職として、船会社で奴隷売買に深く関与し、人を家畜同然の扱いをしたことを悔いてアメージンググレースを作詞しました。深い改悛の心を背景にした賛美歌です。
 今日のアメリカではADA法によりすべての差別条項が撤廃され、差別発言は法的な処罰の対象にさえなっていますが、白人による黒人蔑視の思想は今も根強く米国社会にみられ、法的処置とは別に、心情や実生活の面で今も深い苦闘のなかにおかれているとみえます。人の心は罪深く、たとえ奴隷制度が完全に廃止されたとしても、人種間差別はしたたかに存在しているからです。